日比野研究室
(総合工学P・応用物理学科
 

宇宙粒子(宇宙線)とは

宇宙粒子(宇宙線)とは、宇宙空間を光速に近い速さで飛び交う高エネルギー放射線のことで、地球にも常時到来しています。その発見は、1912年にビクター・フランツ・ヘスによって成されました。ヘスは気球を用いた放射線観測を行い、高度が高いほど頻度が増えることから、地球外から放射線が到来することを突き止めました。この発見により、ヘスは1936年にノーベル物理学賞を受賞しました。
 
宇宙粒子の正体は、大部分は様々な種類の原子核,電子,X線・γ線など波長の短い電磁波,高エネルギーニュートリノですが、ダークマター候補の未知の新粒子も予言されており、近い将来に発見される可能性はあります。それら宇宙粒子一個の持つエネルギーは図1で示したように、10の8乗電子ボルトから20乗電子ボルトを越えるまで、なんと12桁にも及ぶ幅広いエネルギー領域で観測されています。しかしながら、未だに宇宙線がどこから来て、どこでそんなエネルギーを獲得するのかという根本的な謎の解明には至っていません。
 
宇宙粒子は、地球近傍の太陽や我々の銀河系内外から地球に到達しており、その到来方向、エネルギー分布や時間変動を詳細に観測することにより、宇宙空間の様々な情報を我々に教えてくれます。宇宙粒子の起源の多くは、太陽より大きな恒星の一生の最後に起こる超新星爆発によって生まれると言われています。そして、銀河系外の活動銀河中心核では超高エネルギー宇宙粒子が生成されていると予言されています。また、高速回転する中性子星でパルサーと呼ばれている天体では、実際に高エネルギーガンマ線が観測されています。現在では、宇宙粒子の一種である高エネルギーのガンマ線やニュートリノを捉えることにより、我々の銀河系や深宇宙を探る研究が活発に行われるようになりました。その大きな成果の一つとして、1987年に大マゼラン星雲内で起きた超新星SN1987Aからのニュートリノをカミオカンデ実験で検出したことにより、2002年に小柴昌俊先生がノーベル物理学賞を受賞しました。
 
実際の宇宙粒子観測は、図1のようにエネルギー領域により様々であり、比較的低いエネルギー領域では宇宙空間の人工衛星や宇宙ステーションに搭載された検出器で直接観測、さらに高いエネルギー領域では地球大気で相互作用を引き起こした空気シャワーという現象を捉える間接観測などがあります。地球での間接観測も粒子の種類やエネルギーの違いにより、高山であったり、地下深くであったりと様々です。
 
当研究室では、神奈川大学キャンパス内や実験室でできる宇宙粒子観測から、東京大学宇宙線研究所をはじめとする全国の大学、さらに海外の研究機関との国際共同研究プロジェクトに参加しての宇宙粒子観測まで幅広く行っています。

図1:宇宙粒子のエネルギースペクトル
図2:宇宙粒子の観測方法
(横浜国大の片寄祐作氏提供)